機械式時計には、手巻き式と自動巻き式があります。
今は大半が自動巻きとなっていますが、それでも手巻きには根強い人気がありますが、基本的にはゼンマイの巻き上げですが、具体的にどのように違うのかを解説いたします。
今回は、手巻き式と自動巻き式の違いを解説します。実際どんな仕組みなのか、それぞれのメリット・デメリットについても解説していきたいと思います。
目次
- 1.自動巻き時計の仕組み
- 2.自動巻き時計のメリット
- 2-1.自動巻きのメリット その1 装着していれば止まらない
- 2-2 自動巻きのメリット その2 時間の誤差が少ない自動巻き時計のデメリット
- 2-3 自動巻きのメリット その3 種類が豊富
- 2-4 自動巻きのメリット その4 美しく稼働するローターが見える
- 3.自動巻き時計のデメリット
- 3-1.自動巻きのデメリット その1 作りが大きく、分厚い
- 3-2.自動巻きのデメリット その2 オーバーホール代が少し高価
- 4.手巻き時計の仕組み
- 4-1.手巻き時計の注意点
- 5.手巻き時計メリット
- 5-1.手巻き時計のメリット その1 毎日巻く楽しさ
- 5-2.手巻き時計のメリット その2 シンプルなデザイン
- 5-3.手巻き時計のメリット その3 オーバーホールのコストが低い
- 5-4.手巻き時計のメリット その4 宇宙にもいける時計
- 6.手巻き時計のデメリット
- 6-1.手巻き時計のデメリット その1 毎日巻く必要がある
- 6-2.手巻き時計のデメリット その2 低価格帯でのラインナップがない
- 7.まとめ
- 2-2 自動巻きのメリット その2 時間の誤差が少ない自動巻き時計のデメリット
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1.自動巻き時計の仕組み
自動巻きとは聞いた事あるけど、実際の仕組みを把握している人はすくないです。お気に入りの時計が自動巻きと認知していれば大半は問題ないからです。しかしその奥深さを知ることでより時計が好きになる事もあります。
機械式時計がどのように稼働しているのかを知る事でより一層時計に愛着もわいてくるでしょう。基本的に機械式時計の動力源はゼンマイによって稼働しています。巻き上げられたゼンマイがほどけていく力を使用する事で時計が稼働するようになっています。
子供の時に、おもちゃで3人に1人はチョロQで遊んだ事はあるのではないでしょうか。これはゼンマイを巻き上げて、離すと、ほどかれたゼンマイが勢いよくほどけ、チョロQが発車されます。ゼンマイも短いのと一気にほどけるのでその分すぐに止まってしまいます。
時計のゼンマイは一度、一度巻き上げた後に、ほどける力が一定間隔になるように調整されていて、それを「調速機構」といい、一定間隔で振動する事で時計の時間を刻んでくれます。 このように調整されたゼンマイがほどけるパワーが輪列機構に伝わり、秒針、分針、時針を稼働させていきます。
機械式時計の仕組みは複雑で素人が分解して直せるようなものではないので、時計修理の際は必ず専門の所に依頼しましょう。
自動巻き時計はどのようなものなのか、簡単に言えば名前の通り自動で巻いてくれる時計です。腕時計には電池式、手巻き式、自動巻き式とありますが、自動巻き時計の特徴は、腕に装着時の腕の振りでゼンマイを巻き上げてくれます。
機械式時計の始まりは、1656年にオランダ人のクリスチャン・ホイヘンス氏が振り子時計を発明しました。時計は世界で最も正確な時計になり、次の275年間その状態を維持しました。基本的な構造は変わっていませんが、ゼンマイを巻くにはリューズを使って手巻きにする必要がありました。そこから時を経て、機械式時計に人の腕の振りだけでゼンマイ巻き上げを行う機構が誕生しました。それ以降は、手動巻き上げが必要な機構を、手巻き、自動で巻き上げる機構を自動巻きと区別されるようになりました。
自動巻きの始まりは諸説たくさんありますが、1926年にフォルティスが世界初の自動巻き腕時計を発表しました。自動巻きの時計には、ムーブーメントにローターという錘が搭載されており、腕時計が 動くと重力に引っ張られてローターが回転する事でゼンマイを巻きあげてくれます。
自動巻きの大半にはリバーシングと呼ばれる切替車がついていますので、ローターと一緒に回転するようになっています。リバーシングが回転する事でローターの回転がゼンマイを巻きあげるエネルギーに転換されます。
リバーシングが2つ装着されているものについては、ローターの回転が右回りにしろ、左にしろ機能するためのものです。この動きが切替中間車から角穴駆動車に伝わりエネルギーを増幅し、角穴車を回転させて、香箱車に収められたゼンマイを巻き上げるという仕組みになっています。手巻き時計はリューズを使って巻き上げるのですが、自動巻きは腕の振りで巻き上げるため、腕を動かし続ければひたすら巻き上げが続きますので巻き止まりを設ける事はできないため、手巻きと異なり香箱に3つの溝を作る事で、ある程度巻かれるとゼンマイの溝が次の溝にスリップしてゼンマイが切れないようになっています。
時計好きならロレックスのパーペチュアル機構を一度は耳にした事はあるのではないでしょうか。いち早く実用的に市場に普及させたのがロレックスであり、店舗にある現行モデルはほぼ自動巻き式時計となっています。
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2.自動巻き時計のメリット
現在の機械式時計の主流となっているのが自動巻き式ムーブメントです。なぜならば利便性が長けてますし、日常的につけていれば止まる事はほぼありません。実用性も兼ね備えてるので非常に人気が高いです。
2-1.自動巻きのメリット その1 装着していれば止まらない
自動巻きの最大メリットは、腕につけている間は、ほぼ稼働停止がないという事。時計好きは毎日時計を好んでつけますし、毎日つければ自動巻きですので、止まる事はほとんどありません。手巻きと違ってリューズで巻く必要もありません。手で巻くのが面倒と感じる方には自動巻きが向いていると思います。
仕事中でも時計をつけている方は、止まる事はないですが、仕事中に外して、それ以外はつけた場合、稼働しなくなる事もありましたが、最近の自動巻き機械式時計は非常に優秀ですので、そのような心配もなくなりました。オメガのコーアクシャル機構などは数時間の巻きでパワーリザーブ48~60時間の稼働をするようになります。
自動巻きにはローターの左右回転どちらでも巻き上がる両方向と左右どちらかの回転で巻き上げる片方向巻き上げとがあり、今は両方向巻き上げ式が主流です。設計者の考えによっては巻き上げ効率やローター回転のショックの強さなどにこだわりがありますので、片方向巻き上げを採用する時計メーカーもあります。
オメガのコンステレーションなどの高級機の中ではローター外周にプラチナなど貴金属にし、重みで巻き上げ効率を向上させるものもあります。メーカー側のこだわりの素材や設計によってローター回転が腕に伝わる感覚がかなり異なってきますので、機械式腕時計を買う際は、一度試着をして感覚を体感したほうがその時計を知る事ができます。
2-2.自動巻きのメリット その2 時間の誤差が少ない
手巻き式は意識してゼンマイを巻かないと止まるのですが、自動巻きは腕の動きでゼンマイを回しますので、毎日つけていれば時間が狂う事はほぼありません。
手巻き式はゼンマイの駆動力が常に十分にエネルギーを持つ必要があり、各パーツに伝わるパワーがあいまいですと精度についても弱くなってしまいます。自動巻き式は1日数時間程度つけていれば、エネルギーが安定して保持されますのでその分、時計本来の正確性を発揮してくれます。
2-3.自動巻きのメリット その3 種類が豊富
現在は自動巻きが主流のため、多くのブランドが手巻きではなく自動巻きを扱っているので、購入する際の選択肢が大幅に広くなりました。ロレックス・オメガ・タグホイヤーなどの人気ブランドからパテックフィリップの高額ブランドも自動巻きのラインナップを豊富に取り揃えています。
ひと昔前の手巻き式は「巻かないと止まる」当然の事ですが、基本的には日付機能がついていないシンプルなモデルが大半でした。手巻き式も日付などがついた多機能モデルはあるのですが、それでも自動巻き式が圧倒的な数が多いです。
2-4.自動巻きのメリット その4 美しく稼働するローターが見える
現在の自動巻き時計の加工技術が進み、シースルーバックが主流となっています。機械式腕時計の鑑賞をたのしむと同時に、ムーブメントの鑑賞を楽しみたいユーザーも増えています。最近のローターも進化しつつありますが、各社いろいろな工夫を自動巻きに限らずこだわりもって新作を出しています。高級メーカーなどはローターの細部にこだわって装飾しており、非常に細かく装飾しており、目では見えにくい部分にもこだわっています。
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3.自動巻き時計のデメリット
好みの時計にデメリットというのは基本的に存在しないと思います。性能から見ても大きなデメリットはないですし、完全に好みの問題だと思います。その中でも手巻き式と比較したときのデメリットを何点か。3-1.自動巻きのデメリット その1 作りが大きく、分厚い
自動巻きの特徴としては、分厚いデザインとなっている事が多く、手巻き式と比べると、厚みがあります。これはローターなどの自動巻き式機構に搭載されているパーツが多いためで、その分分厚くなってしまいがちです。シンプルで薄い時計が好みの方は手巻き式のほうがいいかもしれません。
3-2.自動巻きのデメリット その2 オーバーホール代が少し高価
パーツ数は手巻きと比べて、パーツ数が多いのが自動巻き式で、定期的にオーバーホールを行う必要がありますが、その際に高くつく可能性があります。パーツ数が多い分、パーツ同士の摩耗が激しくなりがちで、パーツ数が多いので、修理代がその分高くなる事が多く、非常に高度な技術を使っているので、シンプルな手巻きと比べると故障がしやすい事もあります。
時計メーカーもどんどん改良という改良を重ねてきて、耐久性などもどんどんよくなってはいます。しかし結局、精密機械ですので機械式である以上、手巻きでも自動巻きでもデリケートな扱いをする必要があります。自動巻き・手巻き関係なく定期的なオーバーホールは必要です。
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4.手巻き時計の仕組み
ゼンマイの巻き上げを、リューズを介して手で巻いていたので手巻き式といわれていますが、それが当たり前に行われていたけど、自動巻きが誕生してから手巻きと自動巻きと分けていわれるようになったそうです。
昔の機械式といえば手巻き式が一般的でした、現代は自動巻きが主流になっていて、18世紀の時代から時計は手巻きが普及されていました。
リューズを丁寧に巻いていくとゼンマイが巻き上がり、そこから「巻き止まり」が起こります。巻き上がったゼンマイがほどけていくエネルギーが調速機構によって調整され、輪列を取って、時分針へと繋がっていきます。
4-1.手巻き時計の注意点
手巻き時計は自動巻きと比較すると部品の数も少なくローター絡みの問題が少ないため、扱いやすいのですが、手巻きは手巻きの問題があります。手巻きの問題によくあるのが竜頭(リューズ)などでしょうか。手巻き時計は停止した状態から巻き始める場合、数十回前後巻くようにしましょう。
ゼンマイを全て巻き上げますと、それ以上に巻く事が出来なくなります。これがいわゆる「巻き止まり」と言います。巻き止まりの状態から無理やり巻こうとすると、ゼンマイが破損する恐れがあるので注意しましょう。一部のメーカーでは巻き止まりにならないように竜頭(リューズ)に破損しない工夫が施されている手巻き時計もあります。
手巻き時計1本を愛用している方なら、毎日、毎朝、決まった時間に手巻きを行うのが良いとされています。同じルーティンにする事で時計の進みや遅れなどの状態の変化に気づく事ができますし、時計にも愛着が湧くのではないでしょうか。
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5.手巻き時計メリット
手巻き式時計は画期的な技術が内蔵された機械式ムーブメントです。時計ギミックの美しさ、楽しさを兼ね備えた人類が生んだ奇跡の産物ではないでしょうか。自動巻きが主流となったとはいえ、現代でも手巻き人気が衰える事はなく、価値も増しています。
5-1.手巻き時計のメリット その1 毎日巻く楽しさ
手巻き式のメリットといえば、毎日手で巻く楽しさではないでしょうか。手巻き式時計が好きな方は、この手巻き作業を楽しんでいるところだと思います。
手巻き式と自動巻き式の違いは巻き上げ方法になります。自動巻きは先に書いた通り、腕につけている間はひたすら巻かれますので止まる事はないのですが、手巻き式時計はリューズで巻き上げを行う必要があります。
手巻き式は毎日巻くことで、時計に対する愛着も沸いてくる事ではないでしょうか。毎日、時計に触れる事で状態もわかりますし、コンディションもわかってきます。自動巻きより手巻きじゃないと気がすまない根強い時計好きはたくさんいます。
手巻き時計は素材や設計によって、自動巻きと比べた時、カチカチとなる音がするので、時計音を感じる事ができます。
5-2.手巻き時計のメリット その2 シンプルなデザイン
自動巻きの特徴としては、ローターが搭載されていて、ローターが腕の動きに合わせて回転し、ゼンマイの巻き上げが行われるのが自動巻き式です。手巻き式にはローターが搭載されていませんので、内部構造がよく見えるというメリットがあります。
現在は自動巻きを各メーカーがすごく力をいれていてローターにも装飾を施したり、どちらかというと手巻きはシンプルの美しさを兼ね備えています。自動巻き式と比較するとパーツは少ない分、厚みが抑えられる薄型時計を製造する事が可能です。上品な薄型は人気を博し、毎日装着する事の楽しみを与えてくれます。
5-3.手巻き時計のメリット その3 オーバーホールのコストが低い
手巻き式時計は、パーツが少ないためパーツ同士の摩耗が少なく済み、機械式時計にはかかせないメンテナンス費用を抑える事ができます。オーバーホールを少しでも気にする方であれば手巻き時計にしてみるのも良い。ローターは搭載していない分、衝撃に強いというメリットがあります。
5-4.手巻き時計のメリット その4 宇宙にもいける時計
宇宙にいった時計といえば、オメガのスピードマスター プロフェッショナルが有名ですね。月面着陸に傾向されたムーンウォッチとして名を馳せ、1950年代から続く歴史的な時計として今なお手巻きムーブメントとして人気が高い時計の1つです。
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6.手巻き時計のデメリット
結局のところ、自動巻き、手巻きのメリット・デメリットは装着する人が決める事ですが、どのようなつけ方をするのかはその人次第といえます。メリット・デメリットも付き合う事でより一層愛着が沸いてくると思います。
6-1.手巻き時計のデメリット その1 ほぼ毎日巻く必要がある
手巻きをメリットと感じる人もいますし、デメリットと感じる人もいます。手巻きですので、定期的に巻かないと時計が停止してしまいます。それとゼンマイがほどけるにつれて駆動力が低下するためテンプの動きに微妙な狂いが生じ、正確性が微妙に1日30秒~1分ずれてくる事があるためゼンマイを巻くスパンを一定に保つのが理想とされていますが、毎日同じ時間に巻くことでズレもだいぶ減らせます。毎日、同じ時間にゼンマイを巻く行為を「楽しい」ととらえるのか「面倒」ととらえるのかは個人の好みであり、メリットとして考える人が多いため、手巻き時計の人気があるのではないでしょうか。
一般的な機械式手巻き時計は完全に巻いてから48時間前後でゼンマイはほどけてしまいますが、モデルによっては長時間モデルなども存在します。ひと昔前の手巻き式は「日付表示」される手巻き式時計のラインナップはそこまでなかったのですが、最近ではロングパワーリザーブの手巻き時計が出てきてから日付表示搭載モデルなども出てきています。
6-2.手巻き時計のデメリット その2 低価格帯でのラインナップがない
販売の主流が自動巻き式になっているため、一部のハイブランドを除いて、自動巻き式と同じぐらい手巻き式を販売しているブランドはありません。
機械式時計全体の流通量を見てもほとんどが自動巻きとなっていて、ロレックスもひと昔前は手巻きでしたが、現行モデルは自動巻きメインとなっています。オメガのスピードマスターも復刻版では手巻きモデルを採用していますが、ほとんどのモデルは自動巻きかクォーツとなっています。
テレビなどで騒がられるようになって、アンティーク市場では手巻き式時計が人気を博しています。特にロレックスの手巻きデイトナに関しては価格帯が高騰している状況です。
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7.まとめ
手巻き式時計には手巻き式の良さがあり、自動巻き式には自動巻き式の良さがあります。どちらも甲乙つけるものではなく、どちらもカテゴリーがそもそも違うと思います。アンティーク時計の価値は年々上がっているので、そこをメリット・デメリットの指標にするのも変な話だと思います。普段使いする時計はある種、贅沢なものであり、どちらがいいのかは、持ち主が決める事ですので、愛用する時計を1日でも長く使うにはやはり、定期的なオーバーホールをオススメしたいです。